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2009年(平成21年)  7月 23日(第4503号)





AM活用し更新需要に対応/曽小川久貴 日本下水道事業団理事長に聞く
 7月1日付で日本下水道事業団(JS)の理事長に就任した曽小川久貴氏は、国土交通省下水道部長などを歴任し、下水道界のリーダーの1人として長く活躍してきた。下水道事業全体を取り巻く環境が厳しい中での理事長就任だが、MBRなどJSが持つ知見・ノウハウの活用や、「お客様」である地方公共団体がアセットマネジメント(AM)を導入する際の支援に意欲を見せる。「人材こそが最も大きな資源」と言う曽小川理事長に話を聞いた。
 ―下水道事業を取り巻く環境が厳しい中での就任となりましたが、JSの現状と課題についての分析とそれに対する対応を。
 曽小川理事長 JSは、昭和47年に下水道事業センターとして設立されたのが始まりで、50年に日本下水道事業団となりました。37年の歴史がありますが、これまで技術者集団としての評価を下水道関係者から得ています。全国の終末処理場のうち約1,200ヵ所の建設に関わってきたことから、さまざまな知見と対応力を蓄積しています。
 しかし、蓄積したデータを十分に生かし切れていないことも事実です。言わば、まだ磨いていないダイヤモンドの原石が多くあるようなものです。原石を磨いて有用な情報としなければなりません。我々のお客様である地方公共団体からは下水道事業に関してのホームドクター的役割と高度医療機関としての役割を求められていると思うので、その期待に応えられるように研鑽を積んでいきます。
 下水道事業費が減少し、我々の受託事業費も減少傾向にあります。その中でも、今年度から3ヵ年の中期計画では、厳しい状況ではあるものの極端な落ち込みはないと考えているので、この間に事業の足場固めを進めていくことにしています。

「試験方法」改訂が本格化/日水協
 日本水道協会は「上水試験方法2001年版」の改訂に向け、本格的なまとめ作業に入る。改訂版の具体的な内容は、品質管理システム(水道GLP)や精度管理方法などを分かりやすく盛り込んだり、公定法については具体的な検査方法として詳しく記載。簡易分析法についても現行版よりも詳しく記載するなどとしている。改訂版は、分冊化されるなど“使いやすさ”を重視して作成されるのが特徴だ。
 14日に今年度の第1回水質試験方法等調査専門委員会(委員長=安藤正典・武蔵野大学環境学部客員教授)を開き、無機物、有機物、微生物・生物の各部会で作業を分担、全体会合で進行状況を確認した。安藤委員長は「それぞれの部会がまとめた原案と昔の解説編をまずドッキングさせて、洗い直していく」と作業の方針を話した。

「水ビジネス推進室」設置/経産省
 経済産業省は14日、日本企業が水ビジネスの海外展開を図るのを支援するため「水ビジネス・国際インフラシステム推進室」(三橋敏宏室長)を設置した。具体的なプロジェクトは現在のところ決まっていないというが、省内の水分野に関する情報を集約しつつ政策を打ち出していくという。同室の人員は7人体制。

長寿命化などで意見交換/下水道研究会議幹事会
 平成21年度下水道研究会議幹事会が16日、兵庫県尼崎市のホテルニューアルカイックで開催された。幹事23市の関係者ら約40名が出席するなか、国や関係機関との活発な意見交換が行われた。
 金井愼司・代表幹事(横須賀市上下水道局施設部長)、江川隆生・尼崎市副市長の挨拶後、▽岡久宏史・国交省下水道事業課長▽安井保・下水協経営調査課長▽堀江信之・日本下水道事業団(JS)事業統括部長が挨拶した。
 全体会議では▽下水道事業:最近の動向(国交省)▽下水道協会の調査・研究について(下水協)▽長寿命化支援制度とアセットマネジメントへの対応等について(JS)▽下水道機構の業務方針(下水新技術推進機構)について講演。長寿命化支援制度では、出席都市が「調査点検に補助を」「委託内容や発生主義の見直しが必要か」「管更生の位置づけは」などと要望や質問した。国交省は「委託前に長寿命化計画を策定し、予防保全型へ変更してほしい。管更生は長寿命化に役立つが、適正な現場管理を」などと回答した。また、標準活性汚泥法を改造しチッソ除去が可能で経済的な新技術NADHシステムの取り組みも高い関心を集めた。

関係省庁人事異動
▽都市・地域整備局下水道部下水道企画課下水道管理指導室長(警視庁長官官房付・青森県警本部警務部長)山本博之
 総務省14日付
 ▽自治財政局公営企業課地域企業経営企画室長(内閣法制局参事官・第三部)平川薫
 経済産業省14日付
 ▽産業施設課長(北海道経済産業局資源エネルギー環境部長)斉藤群

東京都公営企業管理者・水道局長 尾﨑 勝氏/就任インタビュー
 東京都における今月16日付人事異動により、水道局長には前・同局技監の尾﨑勝氏が就任した。そのキャリアの大半は水道局で、特に計画部門での経験は豊富だ。本紙では、就任初日に同局を訪ね、尾﨑新局長に就任の抱負を伺った。
 「やはり、水道事業は“現場力”です。私は水道局での仕事の約半分は計画畑でしたが、それでも、現場の力があればこそという思いは一貫して強く持っています」
 開口一番、まずは水道事業における様々な現場で培われた実力の大切さを強調した。その思いは計画部門での密度の濃い仕事を通じて培われたものだという。
 「今では利根川水系における全量高度浄水処理の導入実現も間もなくという状況ですが、初めて金町浄水場に導入するまでは、紆余曲折がありました。私が入局して程ない一般職の頃にも導入が議論されていたのですが、当時は時期尚早と判断され頓挫したこともありました。その後、私が計画課にいた時に当時の課長の判断で金町浄水場に係長職として異動となり、この浄水場の原水水質にショックを受け、現場の苦労を身に沁みて感じました。水源の江戸川に流入する坂川という小河川の汚濁物質が大きな要因になっていたのですが、その対応に従事することでこの課題に対する理解が一気に深まりました。計画課にいた頃もその重要度は理解していたつもりですが、机上における理解と現場のそれとではやはり違うわけで、こうした理解が局内に徐々に拡がっていったことで高度浄水処理の導入は前進していきました。高度浄水処理の言わば“夜明け前”の実態を目の当たりにできたのは貴重な経験でしたね」

計画部門中心に水道で
豊富なキャリア

広島県・広島市共同施設のポンプ運転制御方式の変更/ルポ
 高陽取水場は広島県・広島市の共同施設で、独自に取水ポンプ各2台を運転してきた。平成17年度に同市が取水場の運転管理を、第三者委託として受託したことを契機に、省エネルギーの一環として、ポンプ運転制御方式の変更などを行った。その結果、使用電力量や二酸化炭素発生量の削減で大きな効果が得られたとしている。本紙ではこれらの取り組みの成果などをルポした。

大口径既設管耐震化工法で共同研究/東京都下水道局
 東京都下水道局は、東京都下水道サービスと日本ヒューム、コンセック、日本工営の4者と管径800ミリ以上の大口径既設管耐震化工法の共同研究を開始した。最終的な目標としては、管きょごとに設計や複雑な構造計算をしなくても施工できる標準化した耐震化工法をめざす。研究期間は、平成22年6月までの1年間。
 同工法の特長は、非開削で施工でき、管口周りを地山まで切削しないため、止水を必要としないなど、施工性が高いことが挙げられる。
 施工方法としては、まず管口の内側にガイドレールを取り付け、そこに切削機を設置して管きょと人孔壁を切削し、その部分に耐震性材料を充填する。これにより、地震動による屈曲、水平変位などが発生しても流下機能を確保することができる。

海外展開テーマに研究集会/21世紀水倶楽部
 NPO法人21世紀水倶楽部は7日、「下水道の海外展開キーポイント」をテーマにした研究集会を下水道機構の会議室で開催した。講演者から下水道グローバルセンター(GCUS)の活動や民間企業の取り組みが披露され、それを踏まえた討論を行い、下水道の海外展開への道を探った。

膜ろ過給水区域を拡大/鳥取市水道局江山浄水場
 鳥取市水道局はこのほど、膜ろ過処理を行っている江山浄水場(施設能力80,000立方メートル/日=全体計画)の給水区域を拡大した。これにより、給水人口は約75,000人となり、同浄水場で稼動中の浄水能力は全体の50%に当たる40,000立方メートル/日となった。同市では主要水源である千代川伏流水を2つの水源で取水し、これを1つの水源地に集約し塩素滅菌後、そこから各配水池に送水していたが、クリプトスポリジウム対策として江山浄水場を新設し、今年3月から一部供用を開始。

総力あげて課題解決へ/日水協関東地方支部総会
 第77回日本水道協会関東地方支部総会が14日、栃木県宇都宮市内のホテルで開催され、約500人が出席した。今年度の事業計画や予算を決めたほか、会員提出要望12題すべてを全国総会へ上程することを決めた。次期総会は山梨県支部の甲府市が担当し開催する。
 総会の冒頭、開催地を代表して佐藤栄一・宇都宮市長が「ISO9001の認証取得や水道GLPの認証取得などお客さまサービスの高品質化にも努めている。水道事業はさまざまな課題が山積している。本総会がそれら諸問題解決に繋がることを期待する」と挨拶した。

記念史を発刊/日水協岡山県支部
 日本水道協会岡山県支部はこのほど、記念史「水道二世紀に向けて―岡山県支部半世紀のあゆみ―」を発刊した。同県支部の講習会や防災体制などの活動概要をまとめたもので、4部構成の253ページ。

処理水を水資源として活用/メタウォーター 下水再生水システム
 メタウォーターは東京都下水道局と共同で、同社のコア技術であるオゾン発生装置「オゾナイザ」とセラミック膜を用いた「下水再生水システム」を開発した。同局からは既に7,000立方メートル/日の下水再生水施設を受注しているが、再生水市場の今後の拡大を見据え、システムへのRO膜の追加などを検討し、多様なニーズを満たす取り組みを進めていく。

ODシステムの拡販へ/メタウォーター
 メタウォーターは15日、オキシデーションディッチ(OD)法用処理システムの販売を強化すると発表した。ODシステムを取り扱っていたサーンエンジニアリング(大阪市)が3月末で上下水道分野から撤退したことを受け、メタウォーターは同社より関連特許を購入するとともに同技術の開発元であるDHV社(オランダ)との各種契約を承継。これによりODシステム用縦軸型曝気装置「オキシレータ」の製造・販売も手がけることになり、同システムの拡販に乗り出した。
 ODシステムは小規模下水道分野で多くの導入実績があり、その主要設備である反応槽の曝気装置として用いられるのが縦軸型曝気装置だ。

日本大で授業ジャック/管路総研
 水環境シンクタンクの管路管理総合研究所(東京・有楽町、長谷川健司理事)は13日、日本大学実籾キャンパス(千葉県習志野市)で生産工学部環境安全工学科の1年生164名を対象に授業ジャック(出前授業)を行った。同学科では「フレッシュマン講座」と題して、毎週月曜日に学生が将来従事するであろう業界や業務について、専門学科の講師陣が講義を行なっているが、外部からの説明は今回が初めて。
 同学部の越川茂雄教授や坂本恵一准教授らが見守る中、授業では、スライドを用いて、地球上における利用可能な水量や水循環の仕組み、下水処理場の役割などを紹介。処理プロセスに負荷をかける要因のひとつとして、醤油や洗剤、ラーメンの汁などを溶かした水を試薬で検出する実験も行なった。

今年の目標は1万本/ツイン協・総会
 ツインドリル工法協会(会長=河原井正志・三木田興業専務)は19日、東京中央区の三笠会館で第2回総会を開き、平成21年度事業計画などを決めた。
 総会で挨拶した河原井会長は「ステップをリプレイスメントするツインドリル工法の普及目的に昨年発足した当協会は19社でスタートしたが、現在は24社と拡大した。この1年の実績も5,000本に達した。我々の工法はムダ、ムラ、ムリがないのが特徴だ。実施工でも作業時間や騒音などはなかった。今年の目標は10,000本としたい」と述べ、会員の協力を求めた。

水コン協専務理事 櫻井克信氏/就任インタビュー
 ―専務理事就任の感想をお願いします。
 櫻井専務理事 一年前から事務局長を務めていまして今年の総会で専務理事に就任しました。会員があっての水コン協ですので、社会状況に合わせて変化している会員ニーズを的確に捉えていきたいと思います。この新しい時代に水コン協が社会や会員に提供出来るサービスとは何かを追求していくつもりです。また、公益法人改革については「公益」か「一般」かの選択の基本となるのは、何といっても会員ニーズです。こういった課題を議論するため4月の理事会において「今後のあり方検討委員会」を設置しました。ここで会員ニーズを踏まえたサービスのあり方を議論していただき方向を出していきたいと思います。来年の総会に報告出来ればと考えています。

「会員ニーズの把握を第一に」と

分水嶺 コスト低減で研究も/強プラ管協会事務局長 藤本英二氏
 今年6月の総会で事務局長に就任した。「強プラ管は1970年に生産販売されて以来、下水道管や農業用水用パイプライン、空港、造成地、工場などの雨水排水管などにご利用頂いています。また電力用、海水導入といった用途にも使用されており、近年では強プラ管の優れた施工性を活かし、トンネル内やシールド内にも多く使用されています」と強プラ管の特徴を説明する。

計器事業で新会社設立/東芝・東光電気・東京電力
 東芝、東光電気、東京電力の3社は、東光電気の計器事業の一部と、東芝の水道・電力・ガス向けの計器事業を統合し、新会社の設立に向けた基本合意書を締結した。
 東光電気と東芝は新会社を設立し、両社の有する技術、ノウハウなどを統合することで、電子式計器をはじめとする計量機器全般の効率的な製造・販売の仕組みを構築するとともに、顧客ニーズを踏まえた高品質かつ価格競争力の高い次世代計器の開発、安定供給と販売拡大を図る。また、水道、ガス分野および一般産業向け計器事業の強化や海外市場への展開も視野に入れ、規模と収益性の拡大を目指す。新会社名は未定。資本金5億円未満(出資比率は東光電気・1/2超2/3未満、東芝1/3超1/2未満)。売上高は約130億円。今後、東芝と東光電気の2社間で、新会社設立に向け具体的な検討を行い、今年12月の設立を目指す。

新たに24企業が参加/海外水循環システム協議会
 海外水循環システム協議会は21日、同協議会に新たに24社が参加したことを明らかにした。水ビジネス分野で日本企業を欧米の水メジャーに対抗し得るレベルまで育成することを目的に、水関連の国内大手企業が中心となって設立した同協議会の参加企業は、合計38社となった。

"3つのみち"改めて強調/国交省・石井氏が講演
 日本下水道施設業協会・下水道循環のみち研究会は10日、東京・新川の馬事畜産会館で第8回セミナー「下水道循環のみち実現への展望と課題(講師=石井宏幸・国土交通省下水道技術開発官)」を開いた。
 石井氏は「(下水道がもつ)ポテンシャルへの関心は年々高まっている」とし、21世紀型下水道を実現する施策体系の基本コンセプトである「循環のみちの実現」と基本方針である「水のみち」「資源のみち」「施設再生」の3つの必要性を改めて強調した。
 また日本版次世代MBR技術展開プロジェクト(A―JAMP)」の概要や「下水道グローバルセンター(GCUS)」に期待されていることなども紹介した。

セミナーを共催/グリーン21・水団連
 NPO法人グリーンサイエンス21と日本水道工業団体連合会は、第3回「みんなの水道」セミナー(後援=日本水道協会、水道産業新聞ほか)を共催した。セミナーでは森山まり子・日本熊森協会会長が「ツキノワグマの生態に学ぶもの」と題して、水道水源でもある奥山の状況などを解説。海賀信好・お茶の水女子大学大学院研究員は「ドイツの浄水場に学ぶもの」と題して、ドイツのコレラ汚染事故やオゾンの利用状況などを紹介した。